ふらり のらり くらり

徒然なるままに

ニュー・シネマ・パラダイス@シネコヤ

ニュー・シネマ・パラダイス、それは愛の物語ー

 

鵠沼海岸のシネコヤにて、ニュー・シネマ・パラダイスをみてきた。

この映画は、愛についての映画だった。小さいころから映写室が好きだったトト。母親に怒られても、アルフレドにたしなめられても、やっぱり映写室に行くのをやめられなかった。火事でアルフレドが視力を失った後、トトが映写室で仕事することになった。

映写室はトトにとって、生きた場所にほかならない。視力を失ったアルフレドと話す場所、ガールフレンドと一緒に過ごした場所、離れたガールフレンドを想いながら映写機を回す場所。ほかの人々にとっても生活の一部であったのと同様、トトにとっても生活の一部だった。ただ、トトは映画館で生きていたという点が、ほかの人と異なるところだろうが…。

その後戦争があり再びふるさとへ帰ってきたトトに、アルフレドはローマへ行けと厳しい言葉でアドバイスする。その言葉に従いトトはふるさとを後にして、アルフレドの葬式に出るために30年ぶりにふるさとへ帰ってきたのだった。

 

ーここにいると、自分が世界の中心だと感じる。何もかも不変だと感じる。だがここを出て2年もすると、何もかも変わっている。頼りの糸が切れる。会いたい人もいなくなってしまう。一度村を出たら、長い年月帰るな。年月を経て帰郷すれば、友達や懐かしい土地に再会出来る。今のお前には無理だ!お前は私より盲目だ。

 

ー自分のすることを愛せ。子供の時、映写室を愛したように。

30年ぶりに帰郷したトトを待っていたのは、懐かしい面々と、壊されてしまう映画館と、アルフレドの愛だった。

 

ルフレドの形見だと渡されたフィルムに映されていたのは、数々のキスシーン。それをみながら笑うトト。アルフレドはトトが笑う顔を想像しながら、このフィルムを作ったんだろう。この映画のお客さんは、トトただ1人だ。たった1人の人のために作った、最初で最後の映画だ。

人生は映画のようにはいかないかもしれない。この町にあるものは幻かもしれない。「でもやっぱり『お前も』、映画が好きだろう。」

あのフィルムは、アルフレドがトトにそう語りかけているような気がした。

 

 

この素晴らしい映画を、地元密着型の小さな、居心地のよい映画館でみられたことをうれしく思う。江ノ島に行く機会があれば、ぜひシネコヤを訪ねてみてほしい。こういう小さな映画館は、細く長く続いてほしいから、いろいろな人に行ってもらいたい。