水に浸かって
水のなかを泳いでいた。
泳ぎ続けているうちに身体中がだるいような感覚に襲われた。
息継ぎもいちいち苦しい。
自身の体力の衰えを感じる。
ふと思った。
私は水に抗おうとしていないか?
じゃあ、水に抗わないようにしよう。
身体が軽くなり、呼吸も苦しくなくなった。
もう少し。もう少し。
私はひたすら泳ぎ続ける。
水の中で泳いでいる感覚がなくなった。
空気をかいているような状態、と言うべきだろうか。
苦しさも、水の中にいるという感覚もそこにはなく、ただ動くという行為をしている自分がそこにいた。
日常の音が生温く、スローモーションのように動く世界から、現実世界へ戻る。
その繰り返しをしているように思えた。
水からあがった後には、心地よい清々しさだけが残った。